温度データを利用した簡易熱拡散率測定用アプリの開発

村松 良樹1
1東京農業大学,〒156-8502 東京都世田谷区桜丘1-1-1
Veröffentlicht in 2026

 食品素材および食品の加工流通プロセスや調理においても加熱や冷却を伴う操作が施される。例えば加熱殺菌,乾燥,濃縮,冷却・冷蔵,冷凍・解凍,加熱調理,電子レンジ加熱などが一例として挙げられる。これらの操作の最適化や安全と品質を保証する調理や食品加工流通プロセスの確立には数値シミュレーションによる解析が有効となり,このシミュレーションにおいて食品素材や食品の熱物性値は必須の基礎資料である。  熱拡散率の測定方法は幾つかあるが,高価で特別な装置が必要になる場合や煩雑な計算をしなければならない場合,また,熱伝導率,比熱,密度といった 3 種類の熱物性値を測定しなければならない場合がある。そのためシンプル且つ安価な測定装置を用いた熱拡散率の測定方法やプログラミングも不要で誰でも活用できる熱拡散率の推定方法は有用になると考えられる。本研究は,1) 材料の温度変化の測定結果と非定常熱伝導方程式の数値解を利用して材料の熱拡散率を推定する方法を提案すること,2) 熱拡散率を測定するための数値解析アプリを開発することを主目的としている。  本研究では,まず,水とショ糖溶液を用い,提案する測定・推算手法の妥当性を検証した。その際,各試料を銅製円筒容器に入れ,これを温度制御したウォーターバスに浸漬し,加熱時における試料の温度変化を測定した。この温度変化の測定結果と非定常熱伝導方程式の数値解を利用して試料の熱拡散率を推定した。なお,熱拡散率推定の際,2次元回転軸対称非定常熱伝導方程式をCOMSOL Multiphysics Ⓡ により解きながら,最適化モジュールを用いて熱拡散率を推定した。その結果,例えば水の熱拡散率は約 1.5 × 10^-7 m^2/s と推定され,本手法の妥当性が確認された。次いで円柱状に成型した根菜類を試料として用いた。さらに,COMSOL Compiler TM を用いて,csv ファイルなどの温度変化の測定結果データを読み込んで円柱状材料の熱拡散率を推定することができる数値解析アプリを開発した。このアプリは,プログラミングが不要であり,アプリ使用者自身が計測した温度データをもとに対象物の熱拡散率を推定することができるため実用に際し有用になると思われる。

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