食品凍結乾燥における製品形状が乾燥挙動に及ぼす影響

渡辺 史1, 戸張 雄太1, 河野 晋治1
1株式会社前川製作所 〒302-0118 茨城県守谷市立沢2000
Veröffentlicht in 2026

フリーズドライ(FD)は、凍結した製品を真空下で乾燥させることで、高品質を実現できる乾燥技術である。食品のFDでは乾燥の不均一化による品質ばらつきが課題であり、乾燥条件の最適化にも試行錯誤を要する。先行研究では、乾燥界面移動および製品内部状態を再現可能な数理モデルが構築されているが、製品形状が乾燥挙動に及ぼす影響は十分に明らかになっていない。そこで本研究では、数理モデルを用いて製品形状が水分除去速度および製品内部温度に及ぼす影響を検討した。

本研究では、COMSOL Multiphysics® Ver.6.4を用いて食品の凍結乾燥過程の数値解析を実施した。解析にはApplication Libraryに収録されているfreeze_dryingモデルを基礎として用い、対象試料を味噌汁とした。本モデルは伝熱モジュールと多孔質媒体流れモジュールを使用している。伝熱(多孔質媒体)、ダルシー則および変形ジオメトリ(ALE)を連成し、多孔質媒体内の熱移動、水蒸気輸送および昇華界面移動を同時に計算する。昇華界面にはステファン条件を適用し、ALE法により界面移動を追跡した。外部境界は実機を模擬した真空乾燥条件とし、実測された重量変化を再現できるよう熱伝達率を設定した。比表面積および厚さが同一となるよう各形状の寸法を設定し、円形、六角形、四角形および三角形のモデルについて解析を行った。

解析の結果、いずれの形状においても水分除去速度に大きな差は見られず、含水率50%の到達時間は10~11 hであり、形状間で顕著な差は認められなかった。一方で、乾燥界面の進行挙動および温度分布については形状による違いが確認された。特に正三角形では鋭角部を起点として乾燥界面が局所的に大きく進行し、凍結層の端部において正三角形は-14.2℃と、円形(-16.0℃)と比較して1.8℃高い値を示した。これは角部近傍で熱・物質移動が局所的に促進されたためと考えられる。このような内部温度の上昇はコラプス発生の要因となる可能性がある。

以上より、製品形状が水分除去速度に及ぼす影響は限定的であることがわかった。一方、鋭角部を有する形状では内部温度が上昇しやすく、乾燥界面の局所進行や品質低下に関与する可能性が示された。これらの知見は、FD食品の形状設計および乾燥条件設定の合理化に有用である。