COMSOL Multiphysics®によるX線CT実電極構造を用いた厚膜全固体リチウムイオン電池の三次元電気化学解析

兒玉 学1, Lee Kiyoung1, 上澤 明央2, 柳 和明2
1東京科学大学,東京都目黒区大岡山2-12-1 NE-10
2出光興産株式会社
Veröffentlicht in 2026

リチウムイオン電池の高エネルギー密度化を実現するためには電極の厚膜化が有効であるが、厚膜化に伴うリチウムイオン輸送抵抗の増加により、高レート充放電時には電極内部の反応が不均一となり、活物質利用率や出力特性が低下することが課題となる。我々はこれまで、X線CTを用いて取得した実電極構造を活用したシミュレーション手法を開発し、P2Dモデルに実構造由来の構造パラメータを導入することで高精度な電池性能予測を実現するとともに[1]、さらに実電極構造を直接用いた三次元シミュレーションへ発展させ、実験結果を高精度に再現できることを報告してきた[2]。また、活物質中のリチウム拡散係数が電池性能へ及ぼす影響についても実験と数値解析の両面から検討し、電極内部のリチウム輸送が高レート性能を支配する重要因子であることを明らかにしている[3]。本研究では、これらの研究をさらに発展させ、厚膜電極全固体電池を対象とした三次元電気化学解析を実施した。解析対象はLiCoO₂(LCO)およびLiNi₀.₈Co₀.₁Mn₀.₁O₂(NCM811)の2種類の正極材料とし、電極厚さ43 μmおよび100 μmの実電極構造をX線CTにより取得した。取得した三次元画像から有限要素解析モデルを構築し、Battery Design Module(アプリケーションライブラリのモデルは不使用)を用いて電荷輸送、リチウムイオン輸送および電極反応を連成解析した。さらに、2C、4Cおよび6Cの充放電条件について解析を行い、実験結果との比較による解析モデルの妥当性検証を行うとともに、実験では直接観察が困難な電極内部のリチウム濃度分布を可視化した。その結果、シミュレーションにより得られた充放電特性は実験結果と良好に一致し、X線CTを用いた実構造ベース解析の有効性が確認された。また、43 μm電極では高レート条件においても比較的均一な反応分布が維持される一方、100 μm電極では充放電レートの増加に伴いセパレータ(固体電解質)側近傍へ反応が集中し、集電体側には活物質利用率の低い領域が形成されることが明らかとなった。さらに、LCOとNCM811ではリチウム濃度勾配の形成挙動に違いが認められ、活物質特性と電極構造の双方が高レート性能へ大きく影響することが示された。本発表では、X線CTとCOMSOL Multiphysics®を組み合わせた実電極ベースの三次元電気化学解析手法を紹介するとともに、解析モデルの妥当性および厚膜電極の設計最適化に向けた活用方法について報告する。